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少年が扮する小天狗の鉦叩き
（宮川一男氏撮影）

五色の大幣を持ち先導する祢宜

城下町形成以前から山口沖の「天王屋敷」という所に付属する獅子踊りがありました。真田昌幸の上田城築城の際に常田と共に召されて、地固めの祝いに獅子を演舞したことから、以来江戸時代を通して当地の祇園祭の行事に城祭として、常田獅子と共に踊りつづけてきたという伝承を持っています。

これはちで獅子頭をつけた者三人が一緒に踊る形の獅子舞でそこへ或はと呼ぶ者や、少年がする小天狗のきが付いて踊るものです。房山獅子の組立をみると、踊り手には獅子三、小天狗六、祢宜一がおり、他にりが同数つきます。方には太鼓一（手替り一）、笛一〇、唄揚十二がおり、獅子係の貢献十二、笹持十二など笛を除いて常田同様に三の倍数になっていて、それに警固が多数つきます。

その役割分担が町別となっており、獅子と祢宜は上・下川原柳、笛は上・下房山、は新田、警固のうち柳町と紺屋町は行列の先頭に、愛宕町は最後尾につくなどその伝統が守られています。

役柄の装束では、獅子は三頭ともを持ち、先獅子と後獅子は雄で口を開き、中獅子は雌で口を閉じ頭に宝珠をのせています。いずれも黒羽根を用いた長大なたて髪を背後につけ、顔を覆う布を前に垂らし、腰にをつけずに右手に黒い小うちわ、左に鈴を持ち、腰の両側に五色の小をはさみます。祢宜はいかつい天狗面をつけ、金色のをかぶり右手に五色の大を、左に鈴を持ちます。六人の鉦叩きの小天狗のうち、三人ずつ赤と黒の鬼面をつけ、赤面は黒く黒面は赤く麻糸を染めた髪を後に垂らします。この祢宜・獅子・小天狗の踊り手は全員が白足袋に統一しており、黒足袋でえている常田の場合と対照的な違いが見られます。この他の囃子方や警固など、一文字笠をかぶり麻裃姿にばきで、常田の場合と同様です。祢宜の天狗面については、嘉永年間（一八四八－五四）山口村庄屋の弟で、望月伝平という彫刻の上手な人が、殿城の瀧水寺に伝わる猿田彦面を、写しとると災いがかかるといわれているのにそれを恐れず、彫り上げたものといわれます。

房山獅子の踊りの仕草は稲刈風の豊年踊りを表すともいわれて、常田と比べておとなしい動きです。

この房山獅子は、原之郷赤井（現上田市真田町）の東に位置する山を形どったと伝える、原町の「お山の天王山車」と結びついてきました。このことは、常田獅子が海野町の「お舟の天王山車」と結ばれていたことと対比して、伝統の上田祇園祭を歴史的にみていく上でも、その資料的な価値が高いといえるでしょう。

※『上田市誌　上田市の文化財』（執筆担当　田口光一）から転載